交通事故後の坐骨神経痛で慰謝料は請求できるか

交通事故に遭ってから、腰やお尻を中心に痛みや痺れを感じる人もいます。腰から足指にかけて坐骨神経という太い神経が通っていますが、追突の際に腰の辺りに衝撃を受けることで坐骨神経痛を生じるケースもあります。日常的に痛みや痺れを感じながら過ごすのは苦痛です。

これが交通事故の後遺症であるなら、慰謝料を請求するのが正当と言えるでしょう。請求方法などについて解説していきますので、参考にしてみてください。

坐骨神経痛とは

坐骨神経痛は病名ではなく、症状の名称です。神経に障害が起こり痛みを感じている状態で、神経障害性疼痛の一種です。普通は他の病気が原因となって坐骨神経痛がもたらされます。多いのは、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症です。

交通事故では一般的にむちうちと呼ばれる頚椎捻挫になる人が多いですが、腰の部分に強い衝撃が加わると、ぎっくり腰と呼ばれる腰椎捻挫を起こします。そしてこれによって、坐骨神経痛を引き起こす可能性があります。それから、股関節を骨折した場合や、脱臼した場合に坐骨神経痛が現れることも珍しくありません。

腰椎捻挫や骨折などが治っても痛みが続くこともあり、また事故から時間が経ってから痛みを覚える人もいます。症状がひどくなると、ひざより下に影響が出てひざが曲げられなくなったり、片足を引きずらなければ歩けなかったりするといった状態になります。

損害賠償請求権は3年でなくなる

交通事故に遭った後、すぐに痛みがあれば整形外科を受診するでしょうが、時間が経ってから坐骨神経痛が出る人もいるでしょう。この場合も整形外科を受診し、交通事故に遭った経緯を伝えてください。坐骨神経痛が交通事故によるものと認められれば、加害者側の保険会社から慰謝料がもらえます。

ただし、交通事故の損害賠償請求権は事故発生から3年経過すると消失してしまうので、注意が必要です。交通事故で重症を負った場合、治療と示談合意までの期間の合計が3年近くになるケースは稀ではありません。

交通事故の慰謝料とは

精神的な苦痛に対して支払われるお金が慰謝料で、損害賠償金の一部です。交通事故による坐骨神経痛に対しては、入退院慰謝料と後遺障害慰謝料を請求することが可能です。入退院慰謝料は入退院に時間を費やしたことに対する苦痛を癒すお金で、条件さえ満たせば、治療した被害者は必ず請求できます。

入退院慰謝料の金額は、自賠責基準か任意保険基準、弁護士基準のどれで計算するかで変わってきます。自賠責基準が最も低額で、弁護士基準が最も高額です。被害者自身で慰謝料を請求する場合は、任意保険基準で計算し、自賠責保険会社に請求書類を送るのが一般的です。

弁護士に委任する人は、弁護士基準で計算して請求されることになります。一方、後遺障害慰謝料は、後遺障害が認定されなければ請求できません。後遺障害は等級ごとに請求額が決まっています。

坐骨神経痛で後遺障害認定は簡単ではない

交通事故で坐骨神経痛が残ってしまった場合、後遺症に位置づけられます。しかし、その後遺症が治療を行っており、それ以上続けても症状が治まる可能性が低く、さらに労働能力が喪失している場合に、後遺障害が認められます。

坐骨神経痛があっても、これまでとさほど変わらずに仕事ができている場合などは、対象外です。後遺障害認定は、自賠責調査事務所という機関にて行われます。損保会社が共同出資して造られた調査機関なので、公平な立場で判定してくれます。

坐骨神経痛で後遺障害と認められる可能性がある等級は、14級か12級です。これはむちうちの判定基準と同じで、14級9号の「局部に神経症状を残すもの」という基準か、12級13号の「局部に頑固な神経症状を残すもの」という基準を満たす必要があります。

12級の方が支払われる慰謝料が高いので、こちらで認定されるのが望ましいです。しかし、それは容易ではありません。12級13号が適用されるためには、坐骨神経痛が交通事故によるものということが、医学的に証明できなければいけません。

証明はできないが、説明できるという程度だと、14級9号の基準となってしまいます。若年層では腰椎椎間板ヘルニアを、中年以降になると脊柱管狭窄症を発症しやすいため、坐骨神経痛は誰に現れてもおかしくない症状です。

したがって、交通事故によるものだと証明することは容易ではないのです。それでも、歩くのが困難なほど痛みが強く労働能力が著しく落ちた場合などは、14級9号が適用されるべきと言えるでしょう。主治医にはその旨をしっかりと伝えることが大切です。

労働力が著しく落ちた場合などの後遺障害判定には、労働能力過失率も加わります。これは、将来労働によって得られる賃金が減ることが予想される場合の補償です。14級を自賠責基準で計算すると32万円ですが、弁護士基準で計算すると110万円です。

また、12級では自賠責基準が93万円、弁護士基準が290万円となります。これに労働能力過失率が加算されるなどして、別途後遺症逸失利益や後遺症慰謝料が支払われる可能性があります。

慰謝料請求の注意点

坐骨神経痛で後遺障害等級12級に認定してもらうことは、簡単でないことがわかりました。これまで12級に認定してもらった人の多くは、弁護士に依頼し、裁判を起こしています。14級であっても、裁判を起こして支払い額を増額させた例があります。

平成15年3月20日に札幌地裁で出た損害賠償請求事件の判決では、保険会社の最終示談提案額は170万円余りだったのが約400万円増額され、560万円強の支払いが命じられました。慰謝料を請求するには、これ以上治療を継続しても良くならないと判断された症状固定の段階になってからです。

保険会社が定めている治療費打ち切り期間は、むちうちが3ヶ月で、骨折が6ヶ月です。ぎっくり腰は3ヶ月となる可能性が高いでしょう。しかし、改善の見込みがある場合は自腹で治療を続けるべきと言えます。治療を継続していないと、なおさら後遺障害の認定が難しくなるからです。

健康保険は使えますが、交通事故による傷害で使う旨を健康保険組合に連絡してください。慰謝料を請求する際は、医師の診断書も添付する必要があります。この診断書は自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書という専用のもので、この書き方と必要な検査結果、画像資料が後遺障害の認定を左右する大きな要素となっています。

医師は後遺障害認定の細かい基準までは知らないので、必要項目が抜け落ちることは珍しくありません。ですから、後遺障害認定までは交通事故専門の行政書士に相談し、認定後に不服を申し立てる場合は弁護士に相談すると安心です。